アメリカン・コールオプション

ヨーロピアンオプションは行使期限が限定されており、その定められた期日においてのみ権利行使が可能となる。 アメリカンオプションはこの窮屈な行使期限を緩和し、行使のための期間を認めるオプションである。

オプションを購入したときから行使期限までの期間内でいつでも権利行使が可能な資産となる。 この行使期限に関する条件の緩和がオプション価格にどのような影響を与えるだろうか。まずアメリカン・コールオプションについてみてみよう。

<アメリカンコールオプション>

条件緩和の影響を調べるためには、アメリカンコールオプションを満期日まで保有した場合と、 行使期間内で権利行使した場合について比較を行おう。 ただし両取引とも取引が完全に終了した満期日には、原資産である株式を保有しているものと考えておく。

先に結論を言えば、この比較の結果は、アメリカンコールオプションは常に満期日に権利行使することが有利となるというものである。

したがって、アメリカンコールオプションは、これまで議論してきたヨーロピアンコールオプションと同じものとなるのである。

すなわち同一のブラック・ショールズ式が利用できることになる。では権利保留することが有利となることの簡単な説明をしよう。

両取引の満期日時点の価値を求めておく。満期日まで権利保留した場合、当然、 \[ V^*=\max(S_T-K,0) \]

期間内行使の場合、行使日を$t(\lt T)$とすると、 \[ V=(S_t-K)+(S_T-S_t)-(Ke^{r(T-t)}-K)=S_T-Ke^{r(T-t)} \] 中項の三つ目の括弧は行使日から満期日までの金利の損失を考慮している。

ここで場合分けをする。 \[ S_T\gt K\quad の場合、\quad V^*-V=-K+Ke^{r(T-t)}\gt 0 \] \[ S_T\lt K\quad の場合、\quad V^*-V=0-S_T+Ke^{r(T-t)}\gt 0 \] となって、常に$V^*\gt V$であるから、$V^*$が有利であることが分かる。

不思議に思われる方もおられるだろう。それは満期日にまだ株式を保有しているという前提に立って比較していることによるのである。

では期間内に権利行使し、即座に売却することを考えたくなるが、そのケースは公正に比較することが難しいのである。 それに即座に売却したくなると思うならば原資産が高値であるということだから、 このオプションとは別に原資産を空売りすればよい。

従って、アメリカンコールオプションの期間内行使は決して有利とならず、 ヨーロピアンコールオプションと同じものと考えられるから、 アメリカンコールオプションの価格はヨーロピアンコールオプションの価格と同一になるという結論が得られる。

つまりブラック・ショールズ公式はそのまま利用できることになる。

 








権利を購入した時点$0$から、行使期限$T$までの間なら、いつでも権利行使して、ペイオフ$S_t-K$を得ることができる。














































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