最小分散ヘッジ比率

もっとも簡単なリスクヘッジを株式と先物でやってみよう。いま手持ちの株式を3ヵ月後にはキャッシュに変えたいとする。 現時点の株価$S$、先物価格$F$とする。

まったくリスクヘッジしたいのであれば、いま先物で現物を売却してしまえば、リスクはなくなる。

無裁定であるならば、先物価格の知識を使えば、$F=Se^{rt}$であるから、3ヶ月の安全資産利子率分だけ金利を稼げることになる。

しかし、現実は必ずしも原資産の先物取引が用意されているわけでもないし、 キャッシュに交換したい時期が先物の限月にフィットしているわけでもない。

そこで限月以前の途中精算を考えよう。やはり現在の原資産の価格を$S$、先物の価格を$F$とする。 限月以前のある$t$時点で精算したとしよう。そのときの原資産の価格を$S_t$、先物価格を$F_t$とする。

結果的にこの取引の得失$R$は、 \[ R=S_t-(F_t-F) \] となる。

われわれは現時点にいて、この利得のリスク(分散$V$)を最小としたいのであるから、$\min V(R)$としたい。それで、 \[ R=S+(S_t-S)-(F_t-F) \] としておいて、 \begin{eqnarray*} V(R) &= & V{S+(S_t-S)-(F_t-F)} \\ &= & V(S_t)+V(F_t)-2\mbox{cov}{(S_t-S)(F_t-F)} \\ &= & \sigma^2(S_t)+\sigma^2(F_t)-2\rho\sigma(S_t)\sigma(F_t) \end{eqnarray*} とすれば、リスク最小化の知識のとおり、原資産と先物資産の相関係数$\rho$が正で1に近いもの程よいリスクヘッジが行われることとなる。

しかし、相関係数はふつう定められたパラメータとなるので、選ぶことはなかなかできない。 ましてや相関係数が1ということは原資産そのものであるので、意味が無いことになるという指摘があろう。

このときは次のように考える。

一般的に現物と先物の売買単位は異なるので、この単位の調整比率を$k$としよう。$S$と$kF$が同一の単位をあらわすということである。 すると得失$R$は、 \[ R=S_t-k(F_t-F) \] となり、そのリスクは平方完成させると、 \begin{eqnarray*} V(R)&= &\sigma^2(S_t)+k^2\sigma^2(F_t)-2k\rho\sigma(S_t)\sigma(F_t)\\ &=& (\rho\sigma(S_t)-k\sigma(F_t))^2-\rho^2\sigma^2(S_t)+\sigma^2(S_t) \end{eqnarray*} となる。

たとえ$\rho$が所与の定数であっても、 \[ k=\rho\frac{\sigma(S_t)}{\sigma(F_t)} \] とすることで、リスクの最小化がはかれる。この$k$を最小分散ヘッジ比率という。





























$V(x-c)=V(x)$($c$は定数)、
$\mbox{cov}(x,y)=\rho_{xy}\sigma_x\sigma_y$
を思い出されたい。























inserted by FC2 system