投資収益(その2 多期間)

収益率の定義ができたので、もう少し応用を考えておこう。

株式市場で毎日終値を観測するような場合、連続した価格の変化$P_0,P_1,P_2,\cdots$を知ることができる。この場合、1期間の収益率はつぎのようになる。 \[ r_t=\frac{P_t}{P_{t-1}}-1 \] つまり、 \[ P_t=(1+r_t)P_{t-1} \] であるから、1期間後の収益率を加味した価格の式になる。さらに複数期間の収益率に拡張するなら、$t-1$を$t-s+1$まで過去に遡れば、 \[ P_t=(1+r_t)(1+r_{t-1})\cdots (1+r_{t-s+1})P_{t-s} \] となり、$t-s$時点から$t$時点までの関係式が得られる。この結果から、 \[ 1+r_t(s)=\frac{P_t}{P_{t-s}}=(1+r_t)(1+r_{t-1})\cdots (1+r_{t-s+1}) \] として、単位期間が明らかなときの多期間$s$に渡る収益率を定義できる。もし、この期間利子率$r$が一定なら、 \[ P_t=(1+r)^sP_{t-s} \] という、よく見かける複利の式になる。

逆に、$P_t$と$P_{t-s}$が観測できて、ある複数期間の収益率$r_t(s)$が先に得られた時、その単位期間の平均収益率$r$を求めようとすると、 \[ r= \left( r_t(s) \right)^{1/s}-1 \] となる。これはすぐに計算機に頼らないと簡単な感じはしない。

そこで上に戻って、普段から対数をとっておいて、 \[ R_t=\log(1+r_t)=\log\frac{P_t}{P_{t-1}}=\log P_t-\log P_{t-1}=p_t-p_{t-1} \] と定義する。期間を延ばしても、 \[ \log(1+r_t(s))=\log\left(\frac{P_t}{P_{t-1}}\frac{P_{t-1}}{P_{t-2}}\cdots\frac{P_{t-s+1}}{P_{t-s}}\right)=R_t+R_{t-1}+\cdots+R_{t-s+1} \] とできるので、この前提で収益率を議論するなら若干簡単になるかもしれない。市場ポートフォリオを計測する演習では、後のことを考えると面倒でも毎日毎日の終値の対数を取ったほうがいいだろうという話を聞いた古い記憶がある。

理論を進めていくうえでは、都合よく適当に設定するのであまり気にすることはないが、実務では多くは年利率を常識として省略することが多いけれど、 どういう単位の期間を扱っているかは重要なポイントになることはあらためて言うまでもないだろう。


























複利の利子率計算の基本である。

















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