投資収益(その3 いろいろな収益率)

テキストで登場するいくつかの収益率を紹介しておこう。

(所有)期間収益率

最も代表的なもので、すでに説明したものである。$HPR(HoldingPeriodReturn)$と表記されることがある。 \[ HPR=r_t=\frac{P_t-P_{t-1}}{P_{t-1}} \] もし配当$d_t$などがあれば、$P_t$に加えて、$\frac{P_t+d_t-P_{t-1}}{P_{t-1}}$とする。 2変数となるので、その後の扱いはいささか面倒になる。

 

内部収益率

複数期間にわたる資産の購入と売却を考えよう。 0時点で$S_0$の資産を購入し、続けて1時点で$S_1$、・・・、n-1時点で$S_{nー1}$購入したものをn時点ですべて売却すると、 結果として$V_n$が得られたとする。

すべての価値を現在価値にひきなおすことによって計算される次の方程式を満たす$m$を求める。 \[ S_0+\frac{S_1}{1+m}+\cdots +\frac{S_{nー1}}{(1+m)^{nー1}}-\frac{V_n}{(1+m)^n}=0 \] この$m$が内部収益率$IRR(InternalRateOfReturn)$となる。内部収益率は金額加重収益率ともいう。

方程式はn次であるから、残念ながら一般的な解法はないのでコンピュータによる数値計算でもとめる。 内部収益率は期間あたりの平均的な元本の増加率となっている。

企業内の事業投資の判断尺度として利用する場合は、最初の投資を$I_0(>0)$として、次年度以降の収益を$V(>0)$とすることで、 \[ -I_0+\frac{V_1}{1+m}+\cdots +\frac{V_n}{(1+m)^n}=0 \] を満足する収益率$m$と考える。

内部収益率は多期間にわたる資産の変動総額がゼロになるための収益率である。つまり正味現在価値$NPV(NetPresentValue)$を ゼロとする利率(収支見合いの利率)と見ることができる。個人投資家は自分の運用評価として、 この収益率をベンチマークとして使うことが有効かもしれない。

時間加重収益率

内部収益率は投資する金額に重きを置いているが、 一方で時間に重きを置いたものが時間加重収益率$TWR(TimeWeightedReturn),TWROR(TimeWeightedRateOfReturn)$である。 TWRは各期の期間収益率HPRによって、次のように表される。 \[ TWR=\left\{(1+HPR_1)(1+HPR_2)\cdots(1+HPR_n)\right\}^{1/n}-1 \] 時間加重収益率は期間収益率の幾何平均である。

この収益率では、資産総額、収益総額の多寡が表面にでないので、まとまった資産の運用の評価に適している。 投資信託などのポートフォリオのパフォーマンス測定、トレーダの運用実績の比較評価にこの尺度が利用される。




























時々の価値の重みを考慮していることに注意しよう。




























算術平均と幾何平均の関係
$\frac{a+b}{2}\geq \sqrt{ab}$


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