ポートフォリオの収益率

ある時点で複数の資産をミックスした一つの資産(ポートフォリオ)の収益率を考えよう。

ポートフォリオ(portfolio)とは大きなバッグのような容れ物を意味したようだが、 複数の個々の資産(あるいは金融証券)を組み合わせて考えることをいう。 ポートフォリオ選択と呼んだり、大仰な言い方だがポートフォリオを構築するともいう。

2資産の収益率

複数資産の組み合わせとして、もっとも簡単な2資産の組(ポートフォリオ)における収益率を考えよう。 ある期間のそれぞれの収益率を、$r^a,r^b$とすれば、この2資産によるポートフォリオの収益率$r^p$は、 組み入れの比率を$w^a,w^b(w^a+w^b=1)$とすると、 \[ r^p=w^ar^a+w^br^b \] と表される。これは深く考えなくても当たり前のように感じられるだろうが、なぜかといえばつぎのような計算による。

それぞれの資産の数量を$v$、価格を$q$、時点を0、1とすると、各々の収益率に数量は影響しないので、 \[ r^a=\frac{q^a_1-q^a_0}{q^a_0},\qquad r^b=\frac{q^b_1-q^b_0}{q^b_0} \] となる。ポートフォリオの収益率は総額から求めて、 \begin{eqnarray*} r^p&=&\frac{v^aq^a_1+v^bq^b_1-(v^aq^a_0+v^bq^b_0)}{v^aq^a_0+v^bq^b_0} \\ &=&\frac{v^aq^a_1-v^aq^a_0}{v^aq^a_0}\frac{v^aq^a_0}{v^aq^a_0+v^bq^b_0}+\frac{v^bq^b_1-v^bq^b_0}{v^bq^b_0}\frac{v^bq^b_0}{v^aq^a_0+v^bq^b_0} \end{eqnarray*} と変形できるので、 \[ w^a=\frac{v^aq^a_0}{v^aq^a_0+v^bq^b_0},\qquad w^b=\frac{v^bq^b_0}{v^aq^a_0+v^bq^b_0} \] とおけば、当初の式をえることができる。3個以上の資産のミックスの場合も同様に進めればよいだろう。 ちなみに、 \[ w^a+w^b=1 \] とする理由もこれで明らかとなっており、うるさく書けば収益率は、 \[ r^p=\frac{w^ar^a+w^br^b}{w^a+w^b} \] という金額比加重比率である。

資産の総額$v^aq^a_0+v^bq^b_0$を止めて投資金額比率$w$の変化を考えるとき、 ポートフォリオは自己調達的あるいは自己充足的という。すなわち外部からの資金投入を行わない仮定の場合、 自己調達的な仮定をおくという。

たとえば、単価500円の株式10株と単価200円の株式50株のポートフォリオ資産は総額15,000円であるが、 このポートフォリオについて総額15,000円を固めたとしても、単価200円の株式を25株売却、単価500円の株式10株を購入して、 単価500円の株式20株と単価200円の株式25株に組み替えることがいつでもできることを仮定する。 新たな資金の流入出はないので自己調達的になっている。

総投資金額を変えることなく、ポートフォリオを構成する個別資産のさまざまな選択が自由自在に行えるということは、 あまり現実的ではないが、これからの議論の重要な仮定であって、最適化しようとする裁量余地が生まれる。

瞬間収益率

ポートフォリオの収益率の微小な期間の変化を見たいことがある。上のとおり、 \[ r^p=w^ar^a+w^br^b \] とすれば、これは2変数の微小変化を得ることに他ならないから、あまり難しく考えなくても、 $dt$で微分した後で両辺の$dt$を払ってしまえば、 \[ dr^p=w^adr^a+w^bdr^b \] となる。ポートフォリオの収益率の変化はそれぞれの資産の変化の加重和となるから、ごく自然な結論だろう。

とはいえちょっといぶかしく感じられる方は、この式を資産総額から求めることもできる。数量は省略して、 2資産で$Q=P^a+P^b$とすれば、微小変化をいつものように$d$付きにして、 \begin{eqnarray*} \frac{dQ}{Q}&=&\frac{dP^a+dP^b}{Q} \\ &=&\frac{dP^a}{P^a}\frac{P^a}{Q}+\frac{dP^b}{P^b}\frac{P^b}{Q} \end{eqnarray*} であるから、 \[ w^a=\frac{P^a}{Q},\qquad w^b=\frac{P^b}{Q} \] \[ dr^p=\frac{dQ}{Q},\qquad dr^a=\frac{dP^a}{P^a},\qquad dr^b=\frac{dP^b}{P^b} \] とみれば上の式になる。ここで$dP^a=P^a_{t+\Delta}-P^a_t$などなどということであるから、期間を微小とした、 当初の収益率の式に整合している。

すなわち、wがポートフォリオを構成する資産の投資金額比率であるならば、微小時間のポートフォリオの収益率も、 既存の収益率の等式を延長すればよい。すべてキャッシュを基本として論理を組み立てなければならないことになるが、 ポートフォリオの収益率は個別資産の収益率を敷衍して臨めばよいということが分かる。

















組入れ資産額の比率になっている。














































税、手数料などは一切かからない仮定になっている。摩擦の無い市場という。






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