ポートフォリオ構築

個別資産の収益率とリスクを定義して、個別資産の複数の組であるポートフォリオの収益率とリスクに拡張をはかった。 その中の議論において、一つの資産では得ることのできない収益率とリスク(価格変動の可能性)の選択の可能性が生まれた。 この選択の可能性についてもっとも簡単な2資産$a,b$によるポートフォリオでもう少し調べてみよう。

2資産のポートフォリオの収益率とリスクは、 \[ r_p=w_ar_a+w_br_b,\qquad (w_a+w_b=1) \] \[ \sigma_p^2=w_a^2\sigma_a^2+w_b^2\sigma_b^2+2w_aw_b\sigma_{ab} \] と表されるのであった。

もし、$r_a\lt r_b$であるなら、資産$b$の比率を上げれば上げるだけこのポートフォリオの収益率は上がる。 $w_a=0,w_b=1$とすれば最大となって$r_b$になることは明らかだろう。 逆に$w_a=1,w_b=0$とすれば選択肢の中では最小の収益率$r_a$になる。故にポートフォリオの収益率は、 \[ r_a\leq r_p\leq r_b \] とみることが自然だろう。しかし、それはあくまでも$w_a,w_b\geq 0$を前提としたときであって、 もし比率$w$にマイナスを認めれば、さらに幅は広がる。

リスクについては統計学の教えによれば、共分散は相関係数$\rho$を使うことで、 \[ \sigma_{ab}=\sigma_a\sigma_b\rho_{ab} \] とできることが分かっている。標準偏差はリスクの平方根で、$\sigma_a=\sqrt{\sigma_a^2}$などとみる。

このようにすると相関係数は$-1\leq\rho\leq 1$と限定できるので、 標準偏差$\sigma_a,\sigma_b$を止めて、相関係数だけを端に寄せてみよう。 \[ \sigma_p=\sqrt{w_a^2\sigma_a^2+w_b^2\sigma_b^2+2w_aw_b\sigma_a\sigma_b\rho_{ab}} \] としておいて、$\rho=-1$とおく。相関係数が-1となるということは、資産の動きがまったく逆であることを意味する。

$w_a\sigma_a-w_b\sigma_b\geq 0$と仮定すればそのまま根号が外れて、 \[ \sigma_p=w_a\sigma_a-w_b\sigma_b=w_a\sigma_a-(1-w_a)\sigma_b \] となる。$\sigma_a<\sigma_b$と仮定して、小さいほうのリスク$\sigma_a$をポートフォリオのリスクから減算すると、 \[ \sigma_p-\sigma_a=-(1-w_a)(\sigma_a+\sigma_b)<0 \] であるから、$0\le w_a\le 1$なら、$\sigma_p<\sigma_a$となり、 ポートフォリオのリスクが個別資産の小さいほうのリスクより低くなる。 もちろん大きいリスク$\sigma_b$のほうを減算しても、 \[ \sigma_p-\sigma_b=w_a(\sigma_a+\sigma_b)-2\sigma_b<2(w_a-1)\sigma_b<0 \] であるから、同様の結果になる。

これは明らかに相関係数の影響なのだが、二つの資産の相関係数(あるいは共分散)の値によっては、 ポートフォリオは、組み入れる個々の資産のリスクよりもさらに低いリスクを実現する可能性があるということを示している。 ポートフォリオを構築することの最大の意義はここにあるといっても過言ではない。

 












個別資産の購入単位は実数の扱いを仮定し、いくらでも細かくも大きくもできる。




比率$w$をマイナスとするのは、売却(空売り)を意味する。







相関係数は、$\rho_{ab}=\frac{\sigma_{ab}}{\sigma_a\sigma_b}$である。



















inserted by FC2 system