リスク・リターン平面

縦軸にリターン(収益率)、横軸にリスク(標準偏差、ボラティリティ)をとった平面を用意して、 2資産のポートフォリオのグラフを図示してみると、リスクとリターンの関係がいっそう明らかとなる。 \[ r_p=w_ar_a+w_br_b,\qquad (w_a+w_b=1) \] \[ \sigma_p^2=w_a^2\sigma_a^2+w_b^2\sigma_b^2+2w_aw_b\sigma_a\sigma_b\rho_{ab} \]

 

二つの資産によるポートフォリオのリスクとリターンの組み合わせは、リスクとリターンの平面で調べていくと、 共分散あるいは相関係数の有り様によって、平面上の三点、 \[ (\sigma_a,r_a)-(\sigma_b,r_b)-(0,r_f) \] を結んだ三角形の内側になければならない。

return-triangles

まず資産$a$と資産$b$をドットしよう。 これは2資産のポートフォリオの組入れ比率を一方だけに絞ったものと考えることができる。 いまその2点の関係はリスク、リターンとも資産$a$が資産$b$を上回って、$(\sigma_a,r_a)<(\sigma_b,r_b)$と仮定する。 資産$b$は資産$a$に比べて、ハイリスク・ハイリターンな資産ということである。 この二つの点を結ぶと、資産$a$から、右上に向かって資産$b$に到る直線となろう。

そしてもうひとつ分かっていることは、リスクがゼロであれば、それは安全資産となるということである。 このリスクゼロの安全資産はただ一つの収益率しか持たないので、$r_p$軸(縦軸)では1点を定める。 つまり、この3点の内側にポートフォリオの収益率ーリスクの点$(\sigma_p,r_p)$がある。

そこでさらに相関関係を限定する。一方の比率がゼロでない、 なんらかの組入れ割合を持つ($w_a,w_b\ne 0$)ポートフォリオのリスクとリターンの点は、 もし$\rho_{ab}=1$のときは、$(\sigma_a,r_a)-(\sigma_b,r_b)$を結んだ線分のどこかになり、 $\rho_{ab}=-1$のときは、$(\sigma_a,r_a)-(0,r_f)$(あるいは$(\sigma_b,r_b)-(0,r_f)$)を結んだ線分のどこかになる。

 

なぜなら相関係数$\rho=1$ならば、二つの資産はまったく同じような動き(一方が上がれば他方も上がり、下がれば下がる)をする。 リスクの式は面倒な根号をはずせるから、 \[ \sigma_p=w_a\sigma_a+w_b\sigma_b \] となり、 \[ r_p=w_ar_a+w_br_b \] と連立させれば、 \[ r_p=\frac{r_a-r_b}{\sigma_a-\sigma_b}\sigma_p+\frac{r_b\sigma_a-r_a\sigma_b}{\sigma_a-\sigma_b} \] であり、$w_a,w_b\ge 0$なら、$(\sigma_a,r_a)-(\sigma_b,r_b)$を結んだ線分の内分点になる。確かに、 $\sigma_p=\sigma_a$とすれば、$r_p=r_a$が得られるし、$\sigma_p=\sigma_b$とすれば、$r_p=r_b$である。

 

相関係数$\rho=-1$ならば、二つの資産はまったく逆な動き(一方が上がれば他方は下がり、下がれば上がる)をする。 \[ \sigma_p=\pm(w_a\sigma_a-w_b\sigma_b) \] となるから、符合に応じて、$(\sigma_a,r_a)-(0,r_f)$(あるいは$(\sigma_b,r_b)-(0,r_f)$)を結んだどちらかの線分になる。 つまり、$w_a\sigma_a-w_b\sigma_b\ge 0$ならば、 \[ r_p=\frac{r_a-r_b}{\sigma_a+\sigma_b}\sigma_p+\frac{r_a\sigma_b+r_b\sigma_a}{\sigma_a+\sigma_b} \] $-w_a\sigma_a+w_b\sigma_b\ge 0$ならば、 \[ r_p=\frac{r_b-r_a}{\sigma_a+\sigma_b}\sigma_p+\frac{r_a\sigma_b+r_b\sigma_a}{\sigma_a+\sigma_b} \] になる。

ここで$\sigma_p=0$とおけば、いずれの式でも$r_p$は同じ値となるが、 \[ r_f=\frac{r_a\sigma_b+r_b\sigma_a}{\sigma_a+\sigma_b} \] ということである。なぜなら上側の線についてだけやってみると、$r_f$が明示されていれば、 \[ r_p=\frac{r_b-r_f}{\sigma_b}\sigma_p+r_f \] とするのが標準的な形式だろう。$r_f$に上の値を代入すると、 \[ r_p=\frac{r_b-r_a}{\sigma_a+\sigma_b}\sigma_p+\frac{r_a\sigma_b+r_b\sigma_a}{\sigma_a+\sigma_b} \] という同一の式が得られる。

定義域や範囲の前提を無視して大雑把な話をすると、相関係数が$\rho_{ab}$が1から小さくなって、-1に近づいていくにつれ、 ポートフォリオのリスクとリターンが構成比率に従って実現する点は、 資産$a,b$を結ぶ線分が左側に凸にたわんで弓の弧の線上となっていく。そして-1となったとき、縦軸に接することになる。 すなわちこの三角形のどこかにポートフォリオのリスクとリターンの点が位置することになる。

あらためてリスクとリターン平面を確認すると、横軸はリスクで縦軸がリターンである。ふつうわれわれはリスクが小さく、 リターンが高いことを好む(リスク回避選好)と考えられている。この設定においては資産は縦軸に近く、 上にあるものが好ましいことになる。弓の弧を思いどおりにしならせ、二つの資産をうまく選んで組み合わせれば、 リスクの小さい資産$a$よりもさらにリスクを低減し、なおかつリターンを上昇させた点を実現することができる可能性を持つ。

ひとつひとつの資産に注目しているだけではありえない可能性がポートフォリオという概念で生み出されることになる。 繰り返しとなるがこの新たな可能性を切り開いたことがポートフォリオ構築の意味である。 もちろん個々の資産のリスクとリターンそして相関は所与であるから、うまく選択し比率を決めることが重要である。 資産選択という言葉はこのような意味から生まれている。

 




$x=\sigma_p,y=r_p$とおけば、見慣れた$x-y$平面になる。




個々の資産の収益率、リスクはすべて所与の値と考えておく。


われわれが最終的に操作できるものは、$w_a,w_b(=1-w_a)$という配分比率だけである。
















































これは、
$r_p=\frac{r_b-r_f}{\sigma_b}\sigma_p+r_f$
$r_p=\frac{r_a-r_f}{\sigma_a}\sigma_p+r_f$
のいずれかである。



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