リスク最小化

ポートフォリオを構築しようとすると、ポートフォリオは2つ以上の資産の組合せであるから、 個別資産を選択できる裁量を投資家は得るから、もっとも好ましい個別資産を選択することが最初のテーマになると思うだろう。

しかし、われわれは個別資産の選択をポートフォリオの投資配分比率の決定という問題に包括して考えようと思う。 なぜなら個別資産の選択の次にある組合せの比率(構成比率)の決定において、当該資産の比率をゼロとしてしまえば、 その資産は結局選択されていないからである。

現実は銘柄選択のポリシーや投資方針によって先に選ぶことのできる資産が限定されていることが多いかもしれないが、 議論のうえでは、有限なすべての個別資産を視野に入れて、最適なポートフォリオを構築するを目標としよう。 以下では、(すべての)個別資産はすでに選択されていて、その後の配分比率(構成比率)の決定について調べることとする。

ポートフォリオの収益率は個々の資産の収益率と構成比率の線型結合であるから、 2資産で考えても、$r_1$と$r_2$であるとすれば、$w_1$を0から1まで変化させれば、$r_p$を$r_1$から$r_2$まで変化させうる。 このどこかの点を選ぶことは投資家の自由な権利となる。

リスクは収益率ほど構成比率による変化の様相がイメージしにくいが、 構成比率を動かすことによってなんらかの変化をすることは想像するに難くない。

リスクとリターンの平面を考えたとき、適切にリスク資産を組み合わせたポートフォリオであるならば、 そのリスクとリターンの点は安全資産利子率とそれぞれの資産のリスク・リターンの点を結んだ多角錐(三角形)の領域内にある。 そしてリスクを低い方の資産よりもさらに下げる可能性を持つ。

そこでまずポートフォリオのリスクが最小となる構成比率$w$を求めよう。これは次のように一般的に定式化できる。 \[ \min\quad \sigma_p^2=w^t\Sigma w\qquad \mbox{subject to}\quad w^t\cdot \mathbf{1}=1 \] ここで$\mathbf{1}=(1,1,\cdots,1)$というすべて要素が1のベクトルである。(つまり2資産なら、 $w^t\cdot \mathbf{1}=w_1\times 1 +w_2\times 1 =1$である。)

二つの資産によるポートフォリオならば、変数はたかだか$w_1$ひとつに集約できるので、 $\sigma_p^2$は$w_1$の2次関数となるから、初等の解析を使えば、極小となる$w_1$を求めることができる。 \begin{eqnarray*} \sigma_p^2&= & w_1^2\sigma_1^2+(1-w_1)^2\sigma_2^2+2w_1(1-w_1)\sigma_{12}\\ &=&(\sigma_1^2+\sigma_2^2-2\sigma_{12})w_1^2+2(\sigma_{12}-\sigma_2^2)w_1+\sigma_2^2 \end{eqnarray*} だから、両辺を$w_1$で微分して0とおくと、 \[ \frac{\partial \sigma_p^2}{\partial w_1}=2(\sigma_1^2+\sigma_2^2-2\sigma_{12})w_1+2(\sigma_{12}-\sigma_2^2)=0 \] となるので、 \[ w_1=\frac{\sigma_2^2-\sigma_{12}}{\sigma_1^2+\sigma_2^2-2\sigma_{12}} \] を得る。あとは、$w_2=1-w_1$とすれば、リスク最小な投資比率が決定できる。

 


























$\mathbf{1}$は適当な縦あるいは横ベクトルとみてください。




















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