等分散(リスク)曲線

ポートフォリオのリスクの有り様について、一定のリスクの値を定めたときの配分比率の状況を頭に入れておこう。 とりあえず、一番簡単な2資産について計算が目に見えるようにやってみる。

さら組み込み資産の数を増やした場合は、行列を利用することとなるので、慣れたうえで取り組まれたい。

2資産のリスクは、その値を$V=\sigma_p^2$とおいて、 \[ V=w_1^2\sigma_1^2+w_2^2\sigma_2^2+2w_1w_2\sigma_{12} \] となることは本項で繰り返し触れている。

ここでリスク$V$を一定の値に止めて、全体を$w_1$と$w_2$の関数を考えれば、この式は楕円を表す曲線となることは分かるだろうか。 $V$を止めているのだから、等分散曲線は実は楕円となるのである。

馴染みが薄いかもしれないから少しふれておくと、 一般に標準的な楕円の方程式は、定数$a>b>0$と変数を$x,y$によって、 \[ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=1 \] と表されるのである。ここで楕円とは、(ふつう楕円円周上にない$x$軸上の)楕円の焦点と呼ばれる2定点 $(\sqrt{a^2−b^2},0)$と、 $(−\sqrt{a^2−b^2},0)$からの距離の和が、一定$2a$ となる点の軌跡である。

$x=0$ならば、$y=\pm b$であるし、$y=0$ならば、$x=\pm a$であるから、$x$、$y$軸にある4点を通る。 もちろん$a=b=1$であるなら、これは半径1の真円の方程式となる。

さて、ここからさらに$w_1$と$w_2$を変化させることを考えるケースとして、等分散($V$一定)を保っておくために、 曲線の接線を求めたくなることもあろう。そこで楕円の接線の方程式を求めておこう。

線型代数の知見を使えば、楕円は、適当な基底を選ぶことで、中心を原点とした簡略な楕円の式、 \[ \frac{x^2}{a^2}+\frac{y^2}{b^2}=c^2 \] に変換することができるから、簡略の楕円の接線の方程式を求めることとする。

接線の方程式を$y=mx+n$とすれば、傾き$m$は、楕円の式から、 \[ y=\sqrt{-\frac{b^2x^2}{a^2}+b^2c^2} \] を微分して、 \[ m=y'=-\frac{b^2}{a^2}\frac{x}{\sqrt{-\frac{b^2x^2}{a^2}+b^2c^2}} \] となる。この傾きは楕円上のどの点でも成立する。いま楕円上のある点$(v,w)$を決めると、$w=mv+n$で、かつ、 \[ m=\frac{-\frac{b^2}{a^2}v}{\sqrt{-\frac{b^2v^2}{a^2}+b^2c^2}} \] が成立しているので、$n=w-mv$によって$n$を求めれば、接線の方程式が得られる。

きれいな形の式にもっていこうとすれば、さらに、 \[ \frac{v^2}{a^2}+\frac{w^2}{b^2}=c^2 \] も利用して、工夫すれば、 \[ \frac{vx}{a^2}+\frac{wy}{b^2}=c^2 \] という、楕円上の$(v,w)$の接線の方程式としてよく知られた形を得ることができる。

ちなみに収益率は、$\mu=w_1r_1+w_2r_2$なので、これも$\mu$を一定の値に止めれば等収益率線とできる。 等収益率線、等分散曲線と接線の方程式を使えば、最小分散などのいくつかの問題に、 異なるアプローチでチャレンジできよう。

 













数学では楕円は非常におおきな研究テーマであると考えられている。



























両辺を$c^2$で割れば、右辺を1とできる。

















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