ポートフォリオ最適化

ポートフォリオマネジメントは、これまでのリスク最小化から一歩進んで、 投資家の効用関数を最大化する最適なポートフォリオを構築することが目的となる。

所与となるのは幾つかの資産(その収益率とリスク、相関係数)と効用関数であって、 われわれが求めたいのはいくつかの資産に対する投資の比率、すなわちポートフォリオを構成する個々の資産の構成比率である。 構成比率を決定し、自分の効用を最大化するキャッシュの最適配分を決定することが、 投資家が自らの最適なポートフォリオを選択あるいは構築する目標になる。

前提とする効用関数は、前項のとおり、次の関数を仮定する。 \[ U=r_p(w)-0.5A\sigma_p^2(w) \] ここで独立変数$w$はポートフォリオの個別資産の配分比率を指定するベクトル$w=(w_1,w_2,\cdots,w_n)$である。 われわれは$U$を最大とする$w$を求めたいのである。

基本的な問題の定式化は次のとおりとなる。つきつめていけばすべて$w$の関数となっていることがわかる。 \begin{eqnarray*} \max& &\quad U=r_p(w)-0.5A\sigma_p^2(w), \\ &\mbox{s.t.} &\quad w\cdot\mathbf{1}=1,\\ & &\quad w\cdot r=r_p(w),\\ & &\quad\sigma_p^2(w)=w^t\Sigma w \end{eqnarray*}

 

 

段階的な効用最大化

説明のアウトラインを述べよう。議論の進め方は、二つの資産だけの組合せによるポートフォリオをテーブルに載せて、 つぎのように進める。

まずもっとも簡単な安全資産とリスク資産の二つで構成したポートフォリオをとりあげて効用関数の最大化を行う。 ここで効用最大化のあら筋が理解できる。

次に二つのリスク資産によるポートフォリオを考える。式と計算は格段に複雑となるが、効用最大化の方法は同じである。

そして最後に安全資産と二つのリスク資産、合計三つの資産配分によるポートフォリオを考えることとなる。

  1. 「安全資産とリスク資産によるポートフォリオでの効用最大化」
  2. 「二つのリスク資産によるポートフォリオでの効用最大化」
  3. 「安全資産と二つのリスク資産によるポートフォリオでの効用最大化」

リスク資産は多数あっても、安全資産はたった一つしかないので、三段階目まで進めば、 あとは多数の資産の組に発展できる議論になっている。

驚くべきことは、第三段階で安全資産と二つのリスク資産の組合せを考えるとき、 最終的にこのようなポートフォリオを組むことが決まっているならば、 事前に行う二つのリスク資産の組合せは投資家の効用やリスク回避度と無関係に一点に決ってしまうということである。 これを分離定理という。

ポートフォリオは複数の資産を組み合わせたものだが、組み合わせてしまえばひとつの資産と考えることに異論は無かろう。 極端な場合を除けば、リスク資産をどのように組み合わせてもリスク資産(ポートフォリオ)となる。 しかし、分離定理はそのリスク資産が事前に決定されていることを主張するのである。

詳細はそれぞれで説明されるが、この二つのリスク資産の組の一点が事前に決まることを認めるならば、 第三段階の説明の後半部分は、実は第一段階と同じことになることが理解できよう。

同じような考え方による計算の繰り返しがなされるように感じるだろうが、 分離定理の結論の活用が上述の議論の進め方が選ばれる理由なのである。

 



















ベクトルと行列計算の形式は適当に整っていると見てください。

























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