リスクの価格

CAPMは簡明な式であるが、いろいろな使い途が考えられるだろう。 \[ r_i=(r_m-r_f)\beta+r_f,\qquad \beta=\frac{\sigma_{im}}{\sigma_m^2} \]

たとえば次のようなことも考えられる。資産の収益率は、t期、t+1期の価格を$P$とその添え字で表せば、 \[ r_i=\frac{P_{t+1}-P_t}{P_t}=\frac{P_{t+1}}{P_t}-1 \] であるから、これをCAPMの左辺に代入すると、次の式が得られる。 \[ P_t=\frac{P_{t+1}}{1+(r_m-r_f)\beta+r_f} \] $P_{t+1}$を将来の期待価格と考え、$P_t$を現在の価格と考えればどうであろうか。

自分が考える将来の期待価格を当てはめ、この式を利用して現在の価格を求め、 それが実際の市場の価格と乖離していれば、なんらかの裁定取引を窺えるチャンスとなっていることになる。

もちろんそんなに現実の金融市場は容易な世界ではないが、まったく素手で戦うことを思えば、 はるかに進んだ一歩であることが理解できるであろう。

この式はさらに次のように変換を続けていくこともできる。 $\beta$に注目して、 \[ \beta=\frac{Cov(r_i,r_m)}{σ_m^2}=\frac{Cov(\frac{P_{t+1}}{P_t}-1,r_m)}{σ_m^2}=\frac{Cov(P_{t+1},r_m)}{P_tσ_m^2} \] とできる。

この$\beta$を先ほどの式に代入して、両辺の$P_t$を払う。 \[ 1=\frac{P_{t+1}}{P_t(1+r_f)+\frac{Cov(P_{t+1},r_m)}{σ_m^2}} \] ここから再び$P_t$に関連した式にする。 \[ P_t(1+r_f)=P_{t+1} - \frac{Cov(P_{t+1},r_m)}{σ_m^2} \]

この式をよく見ると、左辺$P_t(1+r_f)$は1期後の無リスクの資産価格である。それが期待される1期後の$P_{t+1}$から、 $Cov(P_{t+1},r_m)/σ_m^2$を差し引いたものと均衡時は等しくなることを示している。

つまり、強引な感じがするだろうが、 \[ \frac{\mbox{Cov}(P_{t+1},r_m)}{σ_m^2} \] はリスクに対する価格、リスクプレミアムをさしていることになる。CAPMにおいては、 リスクは個別資産の分散よりも、市場との共分散で形成されることになる。

なんらかの資産のリスクを考えるとき、市場では、その資産そのものの分散よりも、他の銘柄との共分散に注目すべきであることは、 ちょっと不思議な気がするのではないだろうか。

 
































共分散の式の変換を思い出されたい。
















inserted by FC2 system