インデックスモデルの実証

インデックスモデルは、CAPMとの相性が真によく、関連するいくつかの指標が簡明に切り出されてくる。

このことはCAPMの現実での裏付けがいともたやすく行われることも意味する。

CAPMあるいはCAPMのベータをご存じの方は、 さらに「ベータは死んだ」という言葉も聞き及ばれたことがあるだろう。すなわち、CAPMは現実ではとても 利用可能ではないという主旨であるが、その背景は実証による研究に裏打ちされていることが多いようである。

いかに3つのインデックスモデルの実証結果をお見せしよう。いずれもちょっと古い99年から03年までのデータを 利用した回帰直線の推定である。

CAPM-トヨタ

CAPM-ホンダ

CAPM-日産

Y軸に企業名が記されているとおり、ひとつ目はトヨタ、ふたつ目はホンダで、ここまではなんとか回帰直線が 推定できている。CAPMを示す回帰直線も、まあまあ推定として許せるものではなかろうか。

残念ながらまともなベータ値の推定が実行できなかったみっつ目の企業は社名を入れなかったが、どこと思われるだろうか?

答えは日産である。日産は90年代後半に業績悪化に苦しんでおり、ついに99年3月にルノーと資本提携を結んで、 カルロス・ゴーンが社長に就任した時期である。日産はこの後、いろんなマネジメントのレポートで取り上げられた 経営立て直しが始められ、実行された時期で、市場のデータはまさにその結果を反映しているのである。

企業の規模もあるだろうが、外部から見て企業が安定した経営をしている2社はなんとかインデックスモデルが 接近していけるが、経営上の苦難が報道される企業では難しいことが見て取れる。

しかし、まったく感覚的な感想だが、その日産でも、99年から03年に向かって、単年度で見ていくと安定していくように見える。 99年、00年は回帰線が引きようがないが、01年から03年に向かって右肩上がりの回帰直線が安定してきているように見えないだろうか。 もしそうであるなら、立て直しの施策が奏功し始めたということかもしれない。

もともとCAPMは市場が均衡しているときに成立するものであるから、理論上の仮定は完全に満足できないので、実証はできないといってもおかしくない。

あるいは、現実の適応の難しさは当然であるので、これらの結果はどれも想定どおりといえるのかもしれない。

はるかに精密で、膨大なデータを駆使した実証研究による知見は幾多の論文を参照いただくとしても、 ファイナンスを学ぶものは、CAPMあるいはインデックスモデルは当然知るべき基本知識であることは間違いない。

実務での適応についてはその時その時のみなさんの判断にお任せすることとしておこう。

 

































































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