外測度

前項では、無限な集合族の上の測度を考えているうちに、先に測度を置いて測度の存在を許す集合族を探す話しの展開になって、 有限な状況のときと組立てが変質していくところを述べた。

そして強引に実数$\mathbb{R}$から取り出された部分集合の族として、 \[ \mathcal{L}(R)={ 完全加法性を持つ測度mが存在する\mathbb{R}のσ代数 } \] からスタートする手立てを取ることに触れた。

本項ではこの集合族$\mathcal{L}(R)$の中味について調べていく。そのためには原点に遡って測度そのものをおおもとから整理しておこう。

測度といえばもっとも簡明なものは数直線上の距離であるから、2点を$a,b(b\gt a)$とすれば、 \[ J=b-a \] とおいて \[ m([a,b])=J \] とすればよい。

いつも$J\geq 0$となるように$a,b$の減算の順番は考えるものとする。 閉区間としたが端点$a,b$が領域に含まれているかどうかはあまり気にしない。 つまり1点$a$の距離はゼロとしておく。平行移動しても$m$の値が変わらないことは有効な性質である。

数直線なので$\infty$を考慮しなければいけないが、$m$が有限加法性を満たすことは分かるだろう。 それで任意の集合$A\subset \mathbb{R}$があったとき、これを覆うたくさんの区間$J_i$を用意して、 \[ m^*(A)=\inf \left(\sum J_i \right)\qquad (J_iは区間で、A\subset \cup J_i ) \] を考えよう。これを外測度という。

$A$は短いのか長いのか、つながっているのかぶつぶつなのか、どのような線分であるか分からないから、 区間を合計するように考えている。式の頭に$\inf$が付いているが、 $A$を覆う区間の中でもっとも小さいものにしているだけであるから特別なものではない。 なんでも大きなもので覆ってしまうような乱暴ができないようにしているだけである。

「外」という言葉がついているのは、集合$A$をより大きな区間で外側から覆っているからである。

この区間列を使った外測度については、

(1)任意の$A\in\mathbb{R}$ について、$m^*(A)\geq 0$
(2)$m^*(\phi)=0$
(3)任意の$A,B\in\mathbb{R}$が $A\subset B$のとき、$m^*(A)\leq m^*(B)$
(4)集合の列$A_1,A_2,\cdots \subset\mathbb{R}$について、$m^*(\cup A_i )\leq \sum m^*( A_i)$

が成り立つことが証明できる。(1)から(3)はいいとして、(4)については安易過ぎる説明かもしれないが、 外側から覆っていることと任意の$A_i$の共通部分のロスを考えれば、許せるだろうか。

区間の測度を一般化したこの定義をカラテオドリの外測度という。

ふつうの数学のテキストでは、このカラテオドリの外測度を先において、 区間を使った外測度がこの定義を満たしていることを証明する解説のやり方をとるケースがあることを言い添えておこう。

その場合$m^*(J)=J$も証明が必要となる。チャレンジされるとよいだろう。

そこでこの外測度を使って、$\mathbb{R}$の集合を制限する。つまり、どんな部分集合$E\subset\mathbb{R}$をとっても、 \[ m^*(E)=m^*(A\cap E)+m^*(A^c\cap E) \] が成り立つ集合$A\subset\mathbb{R}$をすべて探し、すべての$A$を含む集合族$\mathcal{F}(R)$をつくる。 この$\mathcal{F}$をルベーグ可測集合という。

集めているのは集合$A$であるから混乱しないようにしていただきたい。つまり$\mathbb{R}$に含まれるひとつの部分集合$E$をとって、 この等式が成り立つすべての$\mathbb{R}$の部分集合$A$を探し$\mathcal{F}$に入れる。 そして次々と$\mathbb{R}$から部分集合$E$を取り出して式の条件を満たす$A$を含めていって集合族$\mathcal{F}$を作り、 ルベーグ可測集合というのである。

このようにしてできた集合族$\mathcal{F}$は、
(1)$\mathbb{R}\in \mathcal{F}$
(2)$A\in\mathcal{F}$ならば、$A^c\in\mathcal{F}$
(3)$A_1,A_2,\cdots\in\mathcal{F}$ならば、$\cup A_i\in\mathcal{F}$

を満たしている。つまりσ代数となっているのである。

そしてさらに決定的な事柄は、この$\mathcal{F}$の上のカラテオドリの外測度は、 (4)の式の大小関係を等号にして、$A_i\cap A_j= \phi(i\ne j)$ならば、$m^*(\cup A_i )= \sum m^*( A_i)$

と書き直せることが証明できる。

言い直せば、実数$\mathbb{R}$を全体集合とし、σ代数をルベーグ可測集合$\mathcal{F}(R)$とすれば、 カラテオドリの外測度$m^*$は完全加法性を持ち、$m^*$を使えば、 \[ \mathcal{L}(R)=\mathcal{F}(R) \] となっているのであるのである。

つまり、このカラテオドリの外測度$m^*$に、 \[ m^*(E)=m^*(A\cap E)+m^*(A^c\cap E) \] という適応する集合の条件を加えて書き直した測度$m$は、
(1)任意の$A\subset \mathbb{R}$について、$m(A)\geq 0$
(2)$m(\phi)=0$
(3)任意の$A,B\subset\mathbb{R}$が$A\subset B$のとき、$m(A)\leq m(B)$
(4)集合の列$A_1,A_2,・\cdots \subset \mathbb{R}$について、$A_i\cap A_j= \phi(i≠j)$ならば、 \[ m(\cup A_i )= \sum m( A_i) \] となり、これをルベーグ測度という。

測度と適応する集合の条件が入り乱れているので注意してください。

 































任意の集合$A$は必ずしもつながった区間でなくてもよい。






































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