投資収益

ファイナンスは資産への投資と収益の議論であるから、投資に対する収益はもっとも基本的な概念となる。

収益を考えるとき、収益額か収益率かの選択がある。収益額は投資資本の大きさに左右される。 1%の収益率の資産に、1億円の投資を行えば収益額は1百万であり、1万円の投資ならば1百円となる。 1千万円の投資が10%の収益率であれば、やはり収益額は1百万であり、1千円の投資ならば1百円となる。

ファイナンスではおいおい説明する理論構成上の簡便性から、収益率を中心とすることがふつうである。

ひとつの資産に対する収益率は、投資資本の調達コストを考えると、資本の額にまったく無関係となることはあまり現実的ではない。 また期待できる収益額の大きさそのものによって投資行動が変化することも十分有りうるから、現実でどちらを中心に据えるかは、 その時々の事情や背景によろう。

とりあえず、オーソドックスなファインナンスのテキストに合わせて、収益率に的を絞って話を進めよう。 投資家の有り様や資本調達の前提など、いろんな市場の仮定との整合性から、収益率を中心とした議論とするが、 いつものようにこの議論の進め方が完全に現実にフィットしているわけではないことを覚えて置かれたい。

資産購入の収益率はさらに議論を簡単にするために配当や利子がない前提ならば、購入した額と売却した額の差額と考えるのは自然だろう。 時点$s$で総額$I_s$で購入した資産を、時点$t(>s)$で価格$I_t$で売却したとすると、 この投資あるいは$t-s$期間この資産を保有したことによる収益率$r_t$は、 \[ r_t=\frac{I_t-I_s}{I_s} \] となる。これは収益率のもっとも標準的な表現で期間収益率という。

株式のように株数と単価が明確であるなら、数量$v$、それぞれの時点の単価を$P$として$I_s=vP_s$などを代入すればすれば、 上下の数量$v$を払うことができて、 \[ r_t=\frac{P_t-P_s}{P_s} \] となるから、結局数量単位のことをあまり気にしなくてよくなり、1金額当たりの議論ができるのである。



















収益率は統計的にエルゴード性があるといわれる。






利子率$r$の添え字に$t$(売却時点)がついていることに注意されたい。

















inserted by FC2 system