収益率・リスクへの時間の影響

収益率は、ある期間$(t-s)$を定めたうえで、資産の価格$I$の変動を見ることで定義した。 \[ r_{t-s}=\frac{I_t-I_s}{I_s} \] 簡単に言えば、買値に対する儲け分(売値引く買値)の割合であって、正確に言えば期間収益率である。

時が過ぎ、売買が実行されれば収益率は確定するけれど、将来についていえば、当然収益率は不確定なものとなり、 確率変数の扱いとなるのは自然だろう。 \[ E(r_{t-s})=\mu \] これを期待収益率$\mu$と呼んだ。ふつう煩雑となるので、現時点$s=0$として、$t$時までの単位期間収益率$r_t$を考える。

リスク$\sigma$はこの収益率の分散として得るが、やはり不確定であるから確率変数化されて、 \[ V(r_t)=\sigma_t^2=E(r_t-E(r_t))^2 \] 結果として、それは資産の価格の変動のばらつきの度合いになっている。

この二つの指標はこの後も重要なパラメータとなるので、時間の影響について簡単に考えておこう。

収益率への時間の影響

いま、期待収益率が一単位時間当たり、 \[ E(r)=\mu \] である資産があったとしよう。すると$t(\geq 1)$単位時間当たりの期待収益率は、$t$個の$r$が(独立に)発生するとして、 \[ E\left(\sum r\right)=\mu t \] となる。

$t$単位時間当たりの平均も一単位時間当りの平均も同一である。 \[ E\left( \frac{\sum r}{t} \right)=\mu \]

期待収益率は時間の影響を受けない。

リスクへの時間の影響

収益率と同様に考えると、$t$個のリスクもやはり個々に独立と見て、 \[ V\left(\sum r\right)=\sigma^2t \] となり、標準偏差は、 \[ \sqrt{V(r)t}=\sigma \sqrt{t} \] である。

しかし$t$単位時間当たりの平均的なリスクは、 \[ V\left( \frac{\sum r}{t} \right)=\frac{\sigma^2}{t} \] となり、一単位時間当たりのリスクよりも減少する。

このような変数の扱いをこの先いろいろと見かけるだろう。




導出過程を詳しく述べていないが、確率統計の初歩の計算なのでチャレンジされたい。





























紛らわしいが、この$t$は上のものとは異なる。


inserted by FC2 system